同じ教科書本文を扱っても、クラスの読みが浅く終わる授業と、生徒が本文に戻って考え込む授業があります。差を作っているのは、多くの場合、教材ではなく発問です。発問は授業中の思いつきで出すものではなく、本文研究の段階で設計しておく授業の部品です。
発問の3段階——どこに答えがあるか
発問は「答えのありか」で3種類に分かれます。この分類を持つだけで、発問づくりが体系的になります。
| 段階 | 答えのありか | 例(ある少年がイヌを拾う話なら) |
|---|---|---|
| 事実発問 | 本文の中に書いてある | What did Ken find in the park?(公園で何を見つけた?) |
| 推論発問 | 本文にヒントはあるが直接は書いていない | Why didn't Ken tell his mother?(なぜ母親に言わなかったのだろう?) |
| 評価発問 | 生徒の中にしかない | What would you do?(あなたならどうする?) |
事実発問は理解の確認、推論発問は行間を読む思考、評価発問は本文と自分をつなぐ表現の入り口です。どれが偉いという話ではなく、順番に意味があります。事実で土台を固めないまま推論を問うと当てずっぽう大会になり、推論を飛ばして評価だけ聞くと本文と関係ない感想文になります。
この階段は、リーディング・ラダーの設問構成(事実→事実→推論→語彙・自分)と同じ設計です。ワークシートの設問も授業の口頭発問も、原理は変わりません。
答えやすさの階段——形式でも調整する
内容の3段階とは別に、答える形式にも階段があります。
- Yes/No で答えられる発問: Did Ken like the dog?
- 選択肢つき発問: Did Ken feel happy or sad?
- 一語で答えられるWH発問: Where did Ken go?
- 文で答えるWH発問: Why did Ken go there?
授業の前半や、自信のないクラスでは1〜2から入って、4へ登ります。同じ内容でも、Why do you think so? をいきなり全体に投げるのと、まず Happy or sad? で全員に立場を取らせてから Why? を重ねるのとでは、挙手の数がまるで違います。立場を先に取らせると、理由は言いたくなるものです。
発問のあとの技術——待つ・返す・広げる
発問は言い放って終わりではありません。あとの3手までがセットです。
- 待つ: 発問から指名までを最低3秒あける。沈黙が怖くてすぐ自答したりヒントを重ねたりすると、生徒は「待てば先生が答える」と学習します。3秒は教室では長く感じますが、思考には短いくらいです。
- 返す: 出た答えをそのまま受け取らず、Do you agree?(同じ考えの人?)と教室に返します。教師と挙手した1人の対話を、教室全体の対話に広げる基本の動きです。
- 広げる: 正解が出たら Anything else?(他には?)。正解が1つ出た瞬間に思考を止めないための一言です。
ペアで30秒相談してから指名する「相談タイム」も、挙手が少ないクラスの定番のリカバリーです。個人への発問を一度ペアの発話にすることで、全員が一度は口を動かした状態で指名できます(この構造の話はペア・グループ活動の技術にもつながります)。
発問を英語にする階段
発問を英語で出すか日本語で出すかは、二択ではありません。事実発問は英語で(本文の語彙がそのまま使えるので実は易しい)、推論・評価発問は英語で出して日本語の補足を添える、答えは日本語でもよい、のように段階を混ぜられます。「英語で問われて日本語で考えて答える」も立派な理解の姿です。教師の英語の調整そのものは指示の英語とTeacher Talkで扱います。
明日からの一歩
- 次の本文の授業前に、事実3・推論1・評価1の発問メモを作る
- 発問して3秒、心の中で数えてから指名する
- 出た答えに Do you agree? を1回使ってみる
本文の扱いの全体像は教科書本文の授業アイデア、読み方の技術はスキミングとスキャニングの教え方へどうぞ。