4月の中1教室は、見た目以上に二極化しています。小学校英語で聞く・話すに慣れ、やり取りの度胸を持って入ってくる子。すでに「英語は嫌い」を確定させて入ってくる子。ここで「小学校でやったよね」と進めれば後者が4月末に沈み、「どうせ書けないだろうからアルファベットから全部やり直し」と構えれば前者が退屈します。どちらの失敗も原因は同じで、小学校英語が何を持たせて何を持たせていないかの見積もりがないことです。
小学校から「持ってくるもの」と「持ってこないもの」
| 持ってくるもの | 持ってこないもの |
|---|---|
| 音声のストック(600〜700語に触れた経験。聞けばわかる語がかなりある) | 書く力(写した経験は少なく、自力で綴る経験はほぼない) |
| やり取りの度胸(Small Talk・インタビュー活動の経験) | 文構造の意識(単語と定型文で乗り切ってきた) |
| 定型表現のかたまり(I like 〜. Do you 〜? が音で言える) | 文法用語(主語・動詞という言葉を知らない) |
前提として、小学校英語の目標は「慣れ親しみ」で、中学のような定着の評価をしていません。だから「習ったのにできない」は生徒の怠慢ではなく制度の設計です。もう1つ重要なのは個人差の大きさで、小学校・担任・ALTによって経験の量も質も大きく違います。「中1の4月の学力はそろっていない」を出発点にします。
4月の診断は「できない探し」をしない
最初の2週間で見るべきは、できないことではなく持っているものです。
- 聞いてわかる語の棚卸し——絵や実物を見せて口頭で答えさせると、書けなくても聞けばわかる語が想像以上にあるとわかります。この貯金が中1指導の資本です
- 「言えるけど書けない」を正常と扱う——音声が先で文字が後は正しい発達の順です。ここを「書けない=できない」と評価すると、4月に英語嫌いを量産します
- アルファベットと文字の確認は実用タスクに埋め込む——「自分の名前と好きなものをローマ字・英語で書いて名札カードを作る」のような課題なら、できる子は退屈せず、支援が要る子は自然に見つかります
音声の貯金を文字と構造につなぐ2つの橋
小中の断層は正確には2つあり、それぞれに橋があります。
1つ目は音と文字の断層です。聞いて言える語を、読める・書けるにつなぐ橋はフォニックスの基本ルールで、音と文字をつなぐ指導で扱った優先5ルールを中1の帯で少しずつ入れていきます。「音で知っている語が読めた」という体験は、文字への苦手意識を崩す一番の薬です。
2つ目は定型文と文構造の断層です。小学生はI like soccer.を丸ごとのかたまりで言えますが、部品に分かれていません。これを「だれが・する・だれなに」の箱で見えるようにするのが語順感覚の育て方の5つの箱です。コツは文法用語を後出しにすること。まず箱への並べ替えと差し替えで「部品でできている」を体感させ、主語・動詞というラベルは使えるようになってから貼ります。
小学校の定番活動を中学版に格上げする
小学校で親しんだ活動をやめずに、同じ型のまま中身を深くします。生徒にとって「知っている型」は安心の土台で、「同じ活動なのに手応えが上がる」ことが成長の実感になります。
- Small Talk→毎時間の帯に常設する。続けるほど中学の強みになります(型は帯活動ネタ20選に。1分インタビューやひとことニュースはSmall Talkの発展形です)
- 歌・チャンツ→お楽しみから音声指導の道具に格上げして続投します(歌・チャンツの活用術)
- ジェスチャー・クイズ系→やり取りの度胸を、後のパフォーマンステストにつなぐ入口として使います
授業開きで宣言すること
中1の最初の授業で「小学校でたくさんやった人が有利、では終わらせない教室にする」と宣言します。間違いの扱い方(間違いは教材になる)と声の出し方のルールもここで決めます。授業開きの具体的な台本は英語の授業開きガイドにまとめてあります。最初の文法指導(be動詞と一般動詞)の入り方は文法の教え方ガイドが続きになります。
明日からの一歩
- 4月の最初の2週間の計画から「できないことのチェック」を消し、持っているもの探しの活動に置き換える
- 名前と好きなものの名札カード作りで、文字の実態を一斉テストなしで確認する
- Small Talkと歌のどちらかを帯に常設して、小学校の型を続投させる